■サブリースの問題点

まずサブリースとは、オーナー様から管理会社が物件を借りて
第三者に転貸(又貸し)する契約方式のことをいいます。

サブリースでは管理会社が借主となるので実際に入居者がいるいないに関わらず
家賃が振り込まれるので安心して不動産経営が行うことができるとされています。
一見、サブリースの方が安心なように見えますが本当にそうでしょうか?
わたしたちは不動産管理における現場でサブリース契約に潜む問題点を数多く目の当たりにしてきました。

 問題点1 

家賃が全額保証されるわけではない

サブリース契約での家賃設定額は家主代行で得られる家賃の80~90%が一般的です。
そのためサブリース期間中は本来受け取れる家賃よりも少ない金額しか受け取れません。
仮に90%でサブリース契約をした場合、2年間で家賃の2ヶ月分以上もの家賃をロスする計算になります。

■家賃70,000万円の場合
家主代行で受け取る家賃 70,000円×24ヶ月=1,680,000円
サブリースで受け取る家賃 63,000円×24ヶ月=1,512,000円  差額▲168,000円

要するに2年毎に2ヶ月間の空室が発生しているのと同じような結果になってしまいます。
また免責期間を設けている会社が多くあり、サブリース契約開始から1~3ヶ月ほどの家賃は保証されないケースもあります。

 問題点2 

家賃が減額される

サブリース契約で設定された家賃額は未来永劫約束されたものではありません。
経年や近隣の家賃相場、管理会社の経営状況などによっては家賃の減額請求が行われます。
(早いときは新築購入から2年で減額請求が行われた事例も確認されました。)
そのため当初見込んでいた家賃が入ってこないという事態に陥ってしまいます。
そして減額に応じない場合はサブリース契約を管理会社側から解除されることになるので、
オーナー様は減額かサブリース解約かの選択を迫られることになります。

多くの方が住宅ローンを利用して不動産を購入されますが、サブリースを当てにした返済計画を立てていた
場合は,その後の返済計画に大きな影響を与えることになりかねません。

 問題点3 

一方的にサブリースを解除される

問題点2で、家賃の減額に応じない場合はサブリースを解除されるリスクがあると記述しましたが、
減額交渉すら行われずに一方的にサブリースを解除されるトラブルも頻発しています。
特に賃貸需要が高くないエリアなど採算の合いにくい物件はサブリースを解除されるリスクが高いです。
「サブリースだから安心」その言葉を信用して購入したにも関わらず、ものの10年ほどでサブリースを解除されてしまったオーナー様を多数見てきました。
「聞いていた話と違う」と嘆いても後の祭り。
オーナー側には契約解除に対抗する術はなく、借主であるサブリース業者からは簡単に解約できてしまうのです。

 問題点4

サブリースを解除できない

サブリース契約を解除し通常の家主代行に変更したいと考えてもサブリース業者が解除に応じないというケースが多く存在します。
サブリース契約では通常の賃料よりも安い賃料で契約され、減額交渉もサブリース業者が圧倒的に
有利な立場にいるので
サブリース業者にとっては非常に利益が出やすい仕組みになっているのです。
そのため利益の出ている物件はサブリース業者も手放したくありません。
一般的なサブリース契約書には、オーナー側からは3~6ヶ月前に通告すれば解除ができる
旨の条項が定めてあるので
一見すると容易に解除できるように感じますが、
ここに大きな落とし穴が潜んでいます。

サブリース契約とはオーナーを貸主、サブリース業者を借主とした賃貸借契約に当たります。
賃貸借契約では「借地借家法」という法律が適用されるので、サブリース業者側が解除に応じない場合は、
契約書に解除条項が定めてあったとしても
正当事由が必要になります。
この正当事由のハードルが非常に高く、数ヶ月以上の家賃の未払いなど決定的な事由がないと
正当事由には当たりません。

正当事由がない場合はサブリースを継続するか立ち退き料を支払って解除を求めることになります。
このようにサブリース契約とは、借主であるサブリース業者からは簡単に解除できるので対し、
貸主であるオーナー様から解除するのは非常に困難な契約形式なのです。

 問題点5 

入居者情報が知らされない

サブリース契約では貸主がオーナー様、借主はサブリース業者となります。
そして多くの場合、サブリース業者が第三者に転貸(又貸し)しても契約条件や入居者の情報が
オーナー様に知らされません。

サブリースの条件に満足していれば入居者の情報は必要ないように思えるかもしれませんが、
実際の契約条件は物件の市場価値を判断するのに非常に重要なものです。
また過去には、サブリース契約を解除された上に、相場よりも著しく低い家賃で転貸されており
一気に家賃収入が数万円下がったというトラブルもありました。
また売却をする際には、買主にとって賃貸借契約の条件は非常に重要な情報です。実際の賃料が分からなければ
適正な販売価格を設定できませんし、買主も購入に及び腰になってしまいます。
市場価値を適正に判断し、スムーズに売却を進める上で入居者情報は非常に重要になってきます。

 問題点6 

倒産リスク

サブリース業者が倒産したときはオーナー様は非常に大きなリスクを負うことになります。
家主代行であれば入居者に管理会社の変更や家賃の振込先を通知すれば済みますが、
サブリースの場合はそう簡単にはいきません。
サブリースが倒産した場合の主なリスクは以下の通りです。
・入居者の情報が分からず連絡を取るのが困難。
・保証会社等の引き継ぎがされない。
・家賃が振り込まれない。
・敷金が返還されない。
・退去に関する対応が出来ない。
・破産管財人との交渉が必要になる。
このようにサブリース契約をしていたときの倒産リスクは家主代行の場合よりも大きくなります。
不動産経営は長期運用を目的とされる場合が多いので、
サブリース業者の長期に渡って経営はオーナー様に大きな影響を与えることになります。

まとめ 

ここまでサブリースの問題点や過去に対応したことのあるトラブル事例をご紹介しました。
サブリース契約は空室時でも家賃が入ってくるため不動産経営をする上で
夢のようなシステムに思われがちですが、
空室リスクから完全に開放されるようなものではなく、
あくまでも賃貸借契約の一種に過ぎません。

昨今ではオーナー様を保護するシステムではなく
販売会社が販売をしやすくするためだけのシステムとまで言われています。

サブリース契約自体は決して悪いものではありません。
ただし大きな落とし穴もありますのでオーナー様はメリットとデメリットをよく理解し、
経営者意識を持って契約に臨むことが必要です。